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はじめに


じつは外来で、外傷性頚椎椎間板ヘルニアと診断した患者さんがいます。

しばらく通院がなかったのですが、やっぱり届きました。

担当弁護士からの診断の意見書。。。

タイトル通りなんですが、椎間板ヘルニアを外傷性と診断することはほんとうに難しいんですよね。。。

そして、診断が難しい上に、さらに結果的に書類仕事が増えるのがわかっているので、積極的に治療に関わることに抵抗がある勤務医ばかりではないでしょうか。

増える仕事・増える心労


どんな仕事が増えてしまうかといえば、、、
・診断書
・改善しない症状に対する後遺障害診断
・治療に対する質問に対する回答書
・場合によっては面談
・患者さんが医師を敵視
・その後もしかして裁判沙汰に巻き込まれるかもというモヤモヤした不安
などでしょうか。。。

まあ、そうは言っても、その患者さんとは、しっかり話し合って、患者さんを支持することにしました。

外傷性椎間板ヘルニアの診断は難しい


だからといって、実際にヘルニアを外傷性と確定診断することは難しいです。

単純に患者さんの訴えのみで診断することはできません。

やはりそれなりに画像上で外傷を支持する所見を得なければならないいと思います。

どんな所見が手がかりになるのでしょうか。

わたしが参考にしているのは、
外傷性頚部椎間板ヘルニアのMRI画像による検討
田中寿人ら 整形外科と災害外科 60:(3)424-428, 2011.
です。

スクリーンショット 2018-07-11 5.59.01

外傷群19例と外傷歴のない非外傷群16例にわけてそれぞれのMRI画像を比較しています。

大変わかりやすくまとまっており、とても理解しやすいです。

まさに普段から診療で実感していることで、目からウロコです。

まとめると、次のとおりです。

外傷を支持する所見


・骨挫傷
・棘間靱帯損傷
・喉頭下軟部組織腫脹
・屈曲位での発症
・T2強調画像で高輝度(変性のないヘルニア)

退行変性を支持する所見


・T2強調画像で低輝度のヘルニア
・骨棘
・黄色靱帯肥厚
・伸展位での発症
・脊髄変性を伴う

本症例のヘルニアの特徴


これらの所見を照らしあわして個々に症例を検討していくことが大事です。

それで、今回の症例の方は、
レントゲン、CT、MRIの所見では
・若年
・骨棘なし
・椎間関節変性なし
・黄色靭帯肥厚なし
・T2高輝度ヘルニア
・凸状に突出
の所見でした。

もちろん事故以前には症状なく、医療機関の受診歴はありません。

受傷機転や経過、外傷性の診断に至った経緯を丁寧に回答書に記載いたしました。

だからといって、これで終わりではないですよね。きっと。

この後も相手保険会社からなんらかのアクションがあるだろうと思うと、落ち着かないですね、、、

本日のまとめ


脊椎の診療を専門におこなっていると、賠償保険等から外傷の関連を問われる機会がたいへん多いです。
しっかり対応しないと味方として対応しているはずの患者さんと、逆にトラブルに発展していく可能性すらあります。

たからといって、外傷性椎間板ヘルニアと確実に区別することは困難ですよね。

外来診療は本当に難しいです。

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