カテゴリ:
スポンサードリンク

はじめに


chymopapain製造中止ですたれてしまった腰椎椎間板ヘルニアに対する髄核内注射の治療法ですが、
8月からコンドリアーゼによる治療が開始される運びとなりました。

コンドリアーゼは、髄核内プロテオグリカンのGAGを分解することによって、椎間板のサイズを縮小し、それによって含水量、椎間板内圧を減じて、ヘルニア塊を減少させる作用が期待されております。

もしかしたら、この治療で腰椎椎間板ヘルニアが一撃で治る!と思い込んでしまう患者さんが出てくる可能性があります。

治療効果が独り歩きしないように私達医療従事者はしっかり理解しておかないといけません。

この治療法についての適切な理解を得るためには、
Condoliase for the Treatment of Lumbar Disc Herniation
A Randomized Controlled Trial
を一読することをオススメいたします。
スクリーンショット 2018-07-31 13.22.28


Level of Evidence:1
Spine 2018;43:E869–E876

となっております。

論文のまとめ


ランダム化二重盲検によるプラセボー対照の比較で、多施設第III相臨床試験の結果です。
35の医療機関で行われました。

研究目的


腰椎椎間板ヘルニア患者におけるコンドリアーゼによる髄核分解の有効性と安全性を評価すること。

対象患者


・contained typeのLDHで、片側の下肢痛、SLRテスト陽性を満たす20歳から70歳の患者
・高位はL4/5,L5/6あるいはL5/S
・6週以上の保存加療に抵抗
・VASは50mm以上

除外基準


・多椎間にヘルニアがある場合は除外
・non-contained type(transligamentous extrusion typeやsequestration type)のヘルニアは除外
・過去に腰椎手術歴がある場合は除外
・エントリー三週間以内に神経根ブロックを受けていれば除外
・神経症状を有する場合は除外
・何らかの脊椎疾患を有する場合は除外
・妊婦、授乳中患者は除外
・BMI35以上は除外
・労災受給者は除外

介入方法


1回のコンドリアーゼ1.25単位もしくはプラセボの髄核内注射を行い、症状をチェック

主要評価項目


最も強い痛みの施行後24時間から13週までの変化

副次評価項目


responder rate(最大の下肢痛が50%以上改善された患者の割合)、52週までの下肢痛、腰背部痛、Oswestry Disability Index、SF-36、神経学的所見、および画像パラメータ

結果


コンドリアーゼ82例、プラセボ81例の比較において、

・主要評価項目 
VAS コンドリアーゼ群、-49.5mm プラセボ群 -34.3mm
で有意に痛みの改善が得られております。

スクリーンショット 2018-07-31 14.17.11


そして、13週以後も疼痛改善効果は維持されています。

しかし、このVASの推移をみてわかるように、
注射直後から痛みが激減した、ということではないので、
インフォームドコンセントには十分注意しましょう。

改善の期間には4-6週みておいた方がよいのではないでしょうか?

安全性について


注射後の腰背部痛はコンドリアーゼ群で、より頻繁に発生するようです。
36.6%の患者で観察された、とされています。
ほとんどの腰背部痛は投与後1週間以内に発生するが、 重症度はすべての患者で軽度から中等度であり、とくに問題になるような経過でなかったようです。

アレルギー様の症状(発疹、蕁麻疹、そう痒症、および有毒な皮膚発疹)は4人の患者で報告され、すべてコンドリアーゼ群でした。

画像上の変化について


画像所見では、Modic 1型の変化の発生率と椎間板高30%以上の減少率が、プラセボ群が17.3%および0%であったのに対して、コンドリアーゼ群は26.8%および8.5%で高かったようです。

治療時から52週までの椎間板高の平均変化においても、コントリアーゼ群はプラセボ群よりも有意に大きかった(-17.0% vs -8.0%)という結果でした。

Pfirrmann分類での変化は、コンドリアーゼ群でより頻繁に生じています(53.7% vs 2.5%)。

そうはいっても、臨床症状に関連する結果はなかったとのことでした。

本日のまとめ


ということで、決して一撃で痛みをとる、というような魔法の注射でないことがわかります。

アナフィラキシーショックは、キモパパイン投与後の患者の0.5%で起こったとされています。
コンドリアーゼも外来タンパク質であるため、アナフィラキシーショックのリスクを無視することはできません。

また、椎間板高減少やModic changeの変化などから画像所見をしっかり長期にフォローしていく必要があります。それはつまり、PLIF、TLIFなどの介入が必要になってくる可能性を加味しながら、ということだと思います。


ただ、患者さんにとって、治療の選択肢が増えることはとても素晴らしいことです。

それに伴って、わたしたちも治療の本質を正しく理解する必要があります。

わたしもしっかりと科研製薬にヒアリングしようと思います。




★★★
ブロック初学者に超おすすめです!!ブロック針の持ち方から解剖的な注意点など詳細に豊富な図で説明してくれます!!