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はじめに


じつは脊椎脊髄疾患のなかには、ヒステリー性麻痺(変換症・転換性障害)が紛れ込んでいます。

わたしの肌感覚としては、けっこう多く紛れ込んでいて、手術を考慮するならば、厳しく身体所見をとらないと、のちのちにトラブルの元になると実感しています。

ただ、「これはヒステリー性麻痺」と、どのように診断するのか、、、
これは、とてもとても、とってもむずかしいです。

それに、必ずしもヒステリー性の症状だけではなく、現実には脊椎症状もしっかり発症している患者さんもおられ、両方の要素を含んでいる状況もあり、そう考えると、さらに診断は困難となってしまいます。

脊椎脊髄ジャーナル2018年2月号は非常に含蓄のある内容です。
特集は
「脊椎脊髄疾患と間違えられそうになった症例・疾患」
です。



この診療の流れはまずい


本書の最終稿は園生雅弘先生著の
「ヒステリー性麻痺(変換症/転換性障害)」
で締められております。

とても勉強になります。

「症状の訴えあり(しびれ、痛み、脱力)」→「頚椎MRIで所見あり」→「手術」

この流れは非常にまずいです。

本当にしびれなどの症候の原因が頚椎から生じているのか?と吟味するプロセスがないからです。

・「患者の主訴に寄っていく」、つまり患者さんの希望で手術を行った
・「医師が手術欲に傾いていく」、つまりMRIで所見あるから手術をおこなった

これではヒステリー性の患者をはじけません。

ヒステリー性麻痺と診断できるか


では実際に、わたしにヒステリー性の症状と厳格に診断できるのでしょうか?

本稿では、ヒステリーを除外診断にすると、過剰検査に陥ることが述べられております。

本当に難しいご意見ですが、同時に非常に重要なことです。

有用な神経診察として
・give-way weakness
・屈伸筋を問わない筋力低下(錐体路障害と異なって)
・指屈筋などのわかりやすい筋の筋力低下
・Hoover試験・Sonoo外転試験
が挙げられております。

そして、電気生理検査の重要性が述べられております。

感覚神経や複合筋の活動電位や速度、潜時あるいは筋電図を測定することで正常・異常を見抜くのです。

脊椎外科医全員が、電気生理の達人にはとてもとてもなれませんし、なる必要はないと思います。

が、やはり「主訴」と「画像」ではなく、身体診察所見をしっかりとらなければなりません。

そして、整合性がないような、もしくは迷うときは、手術加療を行わず、神経内科の先生に相談するのがよいと思いました。




本日のまとめ


MRI偏重ではいけません。
かといって患者の希望、という患者の主訴偏重でもいけません。

脊椎外科の手術適応はファジーな部分が多いですね。

不要な手術を行わないようにしなければなりません。

なお、ヒステリーの用語は、世間の認識、われわれの認識に解離があります。患者さん相手に用いるときには、非常に細やかな配慮が必要です。

わたしは誤解が生じることを恐れ、説明には使用しないです。

詳細は本稿をご参照ください。