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はじめに


高齢化社会に伴い、骨粗鬆症患者が増えております。

骨粗鬆症がゆえに、転倒などの外傷を伴わず、骨折をきたしてしまう症例があります。

脊椎の椎体骨折は比較的診断が容易と思いますが、骨盤骨折はいかがでしょうか。

これまでも、脆弱性骨盤骨折はレントゲンでは診断がつかない不顕性骨折として、注意が必要であることを強調してまいりました。

今回は下肢痛を呈した仙骨骨折が見逃されておりました。



腰椎MRIでは所見なし


他院では、体動時痛ならびに下肢痛を呈していたため、腰椎MRIまで検索がなされておりました。

・新規椎体骨折なし
・脊柱管病変なし
・椎間孔病変なし

まではよかったのですが、、、

患者さんは痛くて相談しているのに、「大丈夫、内服で様子見ましょう」と診断されているのですね。。。

脆弱性骨盤骨折のパターン


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この画像は、
Pol M. Rommens, et al. Clinical pathways for fragility fractures of the pelvic ring: personal experience and review of the literature. J Orthop Sci (2015) 20:1–11
より抜粋です。

脆弱性骨盤骨折のパータンのシェーマです。

これを見ると、jの、横断骨折を伴う仙骨骨折以外では、すべて見逃される可能性があるのがおわかりいただけると思います。

腰椎MRIのmid-sagittalのみでは、どれだけ血眼に画像を見ても、骨折は描出されません。

あわよくばS1椎体まで撮像されていれば、水平断で診察の可能性がありますが、5/Sの椎間板レベルまでしか撮像されていなければ、やはりaxial像を見たところで、診断は不可能です。

仙骨骨折では下肢痛を呈することがある


さらに、勢理客久先生は、著書で、下肢痛を呈する仙骨骨折について言及されております。
「高齢者(75歳以上)の仙骨骨折の自覚症状および診断の留意点」

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ご覧の図のように、仙骨部の痛みのみならず、
・鼠径部痛
・臀部痛
・大腿裏痛
・下腿裏痛
など、多彩な症状を示すことがわかります。

下肢痛を呈することが坐骨神経痛によるものと考えることは正しいのですが、その原因が脊柱管の中でなく、外にあることまで考えなければなりません。

画像はウィキメディアからの抜粋です。

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図は坐骨神経のみですが、大腿神経や坐骨神経は腰椎の脊柱管から分岐したあと、仙骨の前方を走行しており、仙骨骨折でこれらの神経の刺激症状を呈することが考察されております。

本日のまとめ


仙骨骨折を臀裂付近の痛みと認識するだけでは不十分です。

多彩な症状を呈するため、体動が困難な場合は、骨盤の脆弱性骨折まで視野にいれた診察が大切です。

診断には、恥骨結合、仙骨まで含めた骨盤部CT、MRIが必須です。




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