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はじめに


メドトロニックの業者さんから冊子をいただきました。

KYPHON™BKP座談会
多発性骨髄腫による椎体骨折に対するBKP
〜血液内科と脊椎外科の連携の実際〜


これを読んで、とても感動しました。

これまで自分が感じていたことがさらに発展して盛り込んであります。

BKPを治療の選択肢としている脊椎外科医は、ぜひ一読すべき冊子だと思います。

座談会構成メンバー


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座談会構成メンバーは
・戸川大輔先生(浜松医大整形外科)
・竹迫直樹先生(災害医療センター血液内科)
・岡村隆光先生(獨協医科大学埼玉医療センター糖尿病内分泌・血液内科)
で行われております(冊子作成時)。

ちなみに、以前災害医療センター整形外科の松崎英剛先生の多発性骨髄腫のBKP治療の講演を伺って、血液内科との連携がとても重要であるとの内容が思い出されました。

初発は75歳くらいになっている


高齢化社会に伴って、多発性骨髄腫の初発は平均75歳くらいになってきているそうです。

この年齢に達すると、椎体骨折が起こった場合に
・多発性骨髄腫による病的骨折なのか
・骨粗鬆症性の脆弱骨折のものなのか

の判断はとてもむずかしいところです。

典型的な画像パターンでないこともたくさんあるからです。

岡村先生は、スクリーニング検査として、蛋白分画をチェックすることを勧められておられます。

尿検査については、ベンスジョーンズタイプのM蛋白の検出が可能とはいっても、陰性例もあるので、単独では用いずに、血清と尿とを併用してM蛋白の有無をチェックすることがベターとのこと。

とても勉強になります。

放射線画像所見のみでは確実な診断はできないので、血清蛋白分画と尿中BJ蛋白のチェックは初回のスクリーニングとして意義あるものと感じました。



BKPは患者さんのPerformance Statusを改善させることに寄与する


病的骨折をおこすと疼痛が非常に強く、基本的にはまったく動けません。



血液内科医の視点では、この骨折による痛みは、“モルヒネ等を初期から強力に使用しないといけないほどの疼痛”とのことです。

そのようなPerformance Statusが著しく悪い状態の患者さんに対して、強い化学療法を行うことはリスクが高い。そのため、治療が思うようにできない、というのが血液内科治療医の悩み、とのこと。
Performance Status不良例は多発性骨髄腫の早期死亡リスク因子
Bradley M et al: J Clin Oncol. 23 9219-9226.


竹迫先生の施設では、強い疼痛を有する病的骨折を起こしている場合は、先にBKPを行い、疼痛を改善せしめてADLが改善したのちに化学療法を導入する症例があるそうです。

血液内科医と整形脊椎外科医との連携が重要


つまり、血液内科医と整形脊椎外科医が連携をとりあって多発性骨髄腫の治療に取り組むことが重要だとおっしゃっています。

今後、モルヒネ等の以外にBKPを用いることで短期に疼痛を緩和させることが治療の選択肢となるかもしれません。

ちなみに、PS: performance statusは
0: まったく問題なく活動できる。発症前と同じ日常生活が制限なく行える。
1: 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行う ことができる。例:軽い家事、事務作業
2: 歩行可能で、自分の身のまわりのことはすべて可能だが、作業はできない。日中の50%以上はベッド外で過ごす。
3: 限られた自分の身のまわりのことしかできない。日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす。
4: まったく動けない。自分の身のまわりのことはまったくできない。完全にベッドか椅子で過ごす。

骨折を起こしてから多発性骨髄腫が発覚すると、基本的には激痛のため、PSは4。
長期臥床を送らざるを得ない状況です。

BKPを行うことでPSを1~2に持っていくことで化学療法に移行することが期待されます。

本日のまとめ


先日の記事
BKPよ、おまえはすでに死んでいる!?
が物議をかもし出しているようです。

対象症例のケースは違いますが、この座談会を読んで大変感銘を受けました。

多発性骨髄腫による病的骨折には、BKPが一つの選択肢になるかもしれません。
短期に疼痛を緩和させ、化学療法に移行することができるケースがあるからです。




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