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とぜん201903-.001

はじめに


退行変性がメインの脊椎領域にも緊急の疾患があります。
その代表格は、血管障害です。

出血することもあれば、血管が詰まることもあります。

硬膜外血腫や脊髄梗塞などがありますが、実は、案外知られておらず、診断の遅れが問題になりがちです。

脊髄の出血系疾患に遭遇したら、どこまで、検査していくのが正解なのでしょうか?

診療群別臨床検査のガイドライン 2003を参考にしています(ふ、ふるい、、、あしからず)。
とぜん201903-.002

検査の順序の考え方


出血傾向がある、あるいは出血性疾患に遭遇したら、検査の順序として次のとおりに考えます。

①血液・造血器疾患としての第一次スクリーニング検査(血液一般検査およびその他の日常検査)
②出血傾向の原因を確かめるための第二次スクリーニング検査(止血スクリーニング検査)
③その結果と臨床所見をもとに確定診断のための検査

③になってくると、もはやわたしには到底無理なレベルなので、潔く血液や膠原病系の専門医に相談したほうがよさそうです。

第一次スクリーニング検査


血液・造血器疾患としての出血性疾患を診断するために最初に行う検査ですが、
まあ、かっこよく書いても、いわゆる通常の検査です。
1.血液一般検査項目
 ①. RBC,Hb,Ht
 ②. 赤血球指数(恒数)(平均赤血球容積:MCV、平均赤血球ヘモグロビン量:MCH、平均赤血球ヘモグロビン濃度:MCHC、赤血球容積分布幅:RDW)
 ③. 網赤血球数
 ④. WBC
 ⑤. 血小板数,血小板指数(平均血小板容積:MPV,血小板容積分布幅:PDW)
 ⑥. 末梢血液塗抹標本による血球形態観察

2.血液一般検査以外の日常検査項目
 a.尿一般検査
   ①尿定性検査
   ②尿沈渣
 b.糞便潜血反応
 c.血液化学検査
   血清総蛋白,蛋白分画,AST,ALT,LD,ALP, γ GT,UN,クレアチニン,尿酸

第二次スクリーニング検査


・出血時間
・活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)
・プロトロンビン時間(PT)
・フィブリノゲン定量
播種性血管内凝固症候群を疑うとき追加する項目
・フィブリン・フィブリノゲン分解産物(FDP)

これらは、結構なにも考えずに測定しています。

ただし、脊髄の出血性疾患は、基本的には抗凝固剤抗血小板剤などの薬剤の影響あるいは血管病変がみつからない特発性のものが多いです。

なので、上記の①、②検査は正常ばかりです。

止血血栓スクリーニング検査の異常と主な病態・疾患のチャートを載せておきます。
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このチャート、「全て正常」のときには、
・血小板機能異常症→血小板機能検査
・第 XIII 因子欠乏症 →因子定量
・線溶阻止因子欠損→因子定量
とあります。

え??
調べていないけど??

というか、どう調べていいのかわからないんですけど、、、

線溶阻止因子って、なに??


そもそも、線溶阻止因子って、なんなんでしょう??

・TAFI(thrombin activatable fibrinolysis inhibitor)
血管内皮ではトロンボモジュリンと結合したトロンビンにより、血小板ではpolyphosphate上で産生されたトロンビンにより活性化され、フィブリンC末端のリジンを切断。線溶機構を遮断する。

・PAI-1(plasminogen activator inhibitor-1)
t-PAと結合し、失活させる。

・α1-AT(antitrypsin)
プロテインCの他、カリクレイン・プラスミン等に対しても阻害作用あり。

・α2-AP(antiplasmin)
血小板由来の第ⅩⅢ因子によりフィブリンと架橋されプラスミンと結合し、失活させる。

・Lp(a):
Lp(a)分子中のapo(a)は、プラスミノゲンと競合しながらフィブリンと結合し、線溶反応を阻害する。またPAI-1の産生を促し、血栓傾向促進的に作用する。

・・・すみません。
ちょっとわかんないんですけども、、、

これらを測定するのが正解なのか?


果たして、これらを測定するのが正解なのでしょうか・・・

そもそも何か出血系素因があるのであれば、脊髄に出血する前に、なんらかの出血系の既往を有していそうな気もしますし、、、

いわゆる全身性の点状出血あるいは持続性の点状出血とか、紫斑、筋肉内出血、 関節内出血などの出血傾向などのエピソードがあれば、といったところです。

このようなエピソードなしに、いきなり初回で出血性素因が原因で脊髄に出血するとはなかなか思えません。

ほか出血性疾患


血管壁の異常
a) 先天性
 ・遺伝性出血性末梢血管拡張症
 ・Ehlers-Danlos症候群など
b) 後天性
 ・血管炎(Henoch-Schönlein紫斑病など)

凝固系の異常
a) 先天性
 ・血友病、von Willebrand病、先天性第VⅡ因子・第VIII因子欠乏症、無フィブリノーゲン血症など

線溶系の異常
a) 先天性
先天性PAI-1欠乏症、先天性α2-AP欠乏症など

ループス・アンチコアグラントのような抗リン脂質抗体が存在するときには凝固時間が延長するが,臨床的には出血傾向よりも血栓傾向を示すそうです。

本日のまとめ


ということで、脊髄出血性疾患に遭遇したらどこまで検査するのが正解なのでしょうか。

脊髄の出血性疾患は、基本的には抗凝固剤や抗血小板剤などの薬剤の影響あるいは血管病変がみつからない特発性のものが多いです。

正直よくわかりませんです。

やっぱり出血傾向のエピソードがなければ、ここまで検査することなく、特発性、ってことでよろしいでしょうか。。。