P1NPは、いつ測定して、どのように扱う?
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はじめに
骨は
「新しい骨を作り、古い骨を壊す」
という新陳代謝を行っています。
骨のリモデリングといいます。
新しい骨を作るのが骨芽細胞で、古い骨を壊すのが破骨細胞です。
骨のリモデリング機序において骨コラーゲン代謝が理解されるようになってから、
コラーゲン代謝に関わる産物を定量する骨代謝マーカーの新規開発がなされました。
骨芽細胞が新しい骨を作っている様子を測るマーカーが骨形成マーカーで、
破骨細胞が古い骨を壊している様子を測るマーカーが骨吸収マーカーです。
骨粗鬆症治療に必須のチェック項目
— とぜんな脊椎外科医@四つ葉スパインクリニック (@yotsuba_spine) August 2, 2019
・骨吸収マーカー:
骨芽細胞が新しい骨を作っている様子を測るマーカー
・骨形成マーカー:
破骨細胞が古い骨を壊している様子を測るマーカー
本記事は骨形成マーカーP1NPについてのまとめです。https://t.co/dD2M79UX7Q
前回記事にした通り、P1NPは骨形成の早期に形成されるので、骨粗鬆症治療開始早期の反応を反映するマーカーとなります。
それでは、このP1NPをどのように実臨床で活用したらよいのでしょうか?
P1NPを測定し、患者さんのアドヒアランスを上げる
イーライリリーMRさんの案内では、このP1NPを測定することで、
「早いうちに治療効果を患者さんにつたえることができるので、治療継続の意欲アップに寄与できます!!」
ということでした。
「アドヒアランスの向上が大切」
— とぜんな脊椎外科医@四つ葉スパインクリニック (@yotsuba_spine) August 3, 2019
患者さんが医師の指示に従わないのは、
・患者さんのせい
ではなく、
・治療に積極的に参加させることができなかった、
医師のせい
となるのです(涙)。
アドヒアランスについてのまとめ。https://t.co/UOZWqXbDpa
たしかにこれまでは、DXAを6ヵ月後に測定し治療効果判定、という流れしかありませんでした。
治療前P1NPと治療後1-3ヵ月後のP1NPを測定し比較することで、PTH治療早期に将来得られる治療効果が判定できるというのです。
提示いただいた根拠は、
①フォルテオ®投与後でP1NPのベースラインからの平均変化率が、1ヵ月後に約105%、6ヵ月後には最大値の約218%に達する
フォルテオ®承認時のFACT試験
②フォルテオ®投与1ヵ月後のP1NPが80μg/L以上上昇したときに、12ヵ月後の腰椎骨密度が10%増加する確率が64.6%であった
Niimi R: Osteoporos Int. 25(1), 377-384, 2014
③治療開始時と治療1-3ヵ月後でのP1NPの値で、10μg/L以上を超える上昇幅が得られれば、治療効果ありと判定できる
アレンドロネートからフォルテオ®に切り替えた患者におけるP1NP有効率は1Mで79%、3Mで97%であった。
Eastell R: Curr Med Res Opin. 22(1), 61-66, 2006
ということでした。
P1NPを測定することのメリット
つまり、患者さんにこの上昇値を伝えることで治療継続の意欲につなげることができる、というのです。
また、反対に、上昇が得られていない場合は、治療のどこかに問題があるのではないかを検討し、適切な対処につなげることができるといいます。
具体的には、
・手技の方法の見直し
・保管場所の見直し
・毎日注射できているかどうかの見直し
・上昇しない潜在的な疾患がないかの洗い直し
などを検討できるといいます。
PTH導入前に、ビス剤などの骨吸収抑制剤を使用されていた場合は治療後3ヵ月後を目安にP1NP測定することが推奨されています③。
とぜんの実臨床ではどうなの?
理屈はよくわかるのですが、実臨床ではなかなかそうもいきません。
まず、フォルテオ®は1本あたり28日分です。
P1NPは外注であるため、当日に結果を得ることができません。
結果説明のためにわざわざ翌週受診してもらう?
それともひとりひとり電話で伝える?
電話しても不在であれば、もう一度電話しないといけません。
Face to faceでない電話の説明に、治療継続の意欲をかきたてるものではないと思います。
そもそもそんな時間ありません、、、
翌週に来てもらうのも高齢者に忍びないです。
そうすると次回外来で説明ってことになるのですが、
1本処方していれば28日後。
2本処方していれば56日後。
3本処方していれば84日後です。
患者さん採血したこと忘れちゃいますよ、、、
ということで、P1NPを用いて、患者さんの治療意欲をかきたてるという作戦はあまり有効と感じていません。
治療継続してほしいのはもちろんなので、ひたすら熱っぽく外来で治療の重要性を語っています(時間かかる〜〜)。
ただし、PTH製剤使用しているときは、P1NPは必ず測定しています。
治療効果判定として自分自身でモニタリングしていますね。
あるいは地域連携のデータや学会でのデータとして用いています。
本日のまとめ
フォルテオ®の連日投与継続には、医師、看護師、薬剤師、患者、すべてに熱い思いがないと難しいです。
手技、薬価、冷蔵保管など難関がたくさん。
わたしの外来では注射針の本数や、消毒綿の枚数などのトラブルも出てくることがあります。
PTH製剤そのものは非常に効果的で、わたしたち脊椎外科医にとって近年のブレイクスルーになった薬剤であることは間違いありません。
さまざまな工夫をもって、患者さんが治療を継続することで、二度と骨が折れないようになることを切に願います。
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