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とぜん201903-.001

はじめに


CBT:Cortical bone trajectory
は、腰椎の後方スクリュー刺入の新しい軌道として、2009年にThe Spine Journalに掲載されました。

2009年なので、もう新しいと言えないのかな、、、

理想で言えば、このスクリュー軌道は
①椎弓背側の刺入点の皮質骨
②椎弓根内側下縁の皮質骨
③椎弓根外側上縁の皮質骨
④椎体外側の皮質骨
と4段階で皮質骨を噛み込みます。

そのため、従来の椎弓根スクリューと比較して、
・引き抜き強度が約30%増加
・挿入トルクが約1.7倍に増加

するとされています。

硬い皮質骨に最大限に接触するためには、下穴をつくるときに、勇気をもって硬いところに挑んでいかなければなりません。

それがとてもむずかしいし、怖いんですよね。

しかし、マイスパインMCというメダクタの3Dテンプレートを用いると、かなり正確に術前にイメージしたCBTの軌道を捉えることができます。

CBTをメインに行うようになった


ということで、いまわたしはこのテンプレートを愛用して、CBTでのPLIF/TLIFを行っています。
とても気に入っています。

今の所、この3Dテンプレートを作成するためには、
1.患者さんのCT画像をCDRに落としてメダクタの担当にわたし、
2.メダクタのWeb上のプラットフォームで作図し、
3.スイスにあるメダクタの工場でテンプレートが作られ、
4.日本に輸出される
という手順があるため、おおよそ2.5〜3週くらいの期間が必要なのです。

なので、3Dテンプレートが手術スケジュールに間に合うのであれば、わたしは基本的にCBTで椎体間固定をするようになっています。

間に合わなければ、これまで通り、PPSで手術を行っています。
その時は基本、バイパープライム®を用いています。

CBTを経皮的に打つ!


ところが、CBTは経皮的に打つこともできるそうです。

論文を紹介します。
One-Year Prospective Evaluation of the Technique of Percutaneous Cortical Bone Trajectory Spondylodesis in Comparison with Percutaneous Pedicle Screw Fixation: A Preliminary Report with Technical Note

Sumihisa Oritaら.
J Neurol Surg A Cent Eur Neurosurg. 2016;77(6):531-537.

スクリーンショット 2019-08-10 4.51.28

わたしが勝手に敬愛している千葉大学グループからの論文です。

そうか、、、
透視を用いて、PAKニードルなどで下穴を掘れば、割と正確に打てるのか。
しかも経皮的に!

これまで、CBTスクリューを経皮的に挿入するテクニックは聞いたことがありませんでした(不勉強ですみません)。

この論文には、
・刺入点の決め方
・透視でのトラジェクトリーの見え方
・PAKニードルが滑らない工夫
・注射シリンジを用いたオリジナル外套の作りかた

などなど、かなり詳細なTipsが紹介されています。
スクリーンショット 2019-08-07 20.37.42


さらに、経皮的CBTと、従来のPPSでの固定との治療成績を比較しています。
スクリーンショット 2019-08-07 20.37.28


長期で見ていくと、腰痛も下肢痛も経皮的CBTのほうがPPS群より改善しています(統計学的には下肢痛の改善は有意)。

CBTに感じている私なりのメリットとデメリット


論文では、腰痛の改善がいい理由を、PPSが貫く筋層が多裂筋、最長筋であることに対して、経皮的CBTは多裂筋のみであることを考察していました。

実は、PPSって術後にオープン法よりも痛がる人がけっこういると感じていたんですよね。

わたしが術式をCBTに変更している理由は
①TLIF時に反対側関節を骨母床として骨移植できる
②トランスバースコネクターを使える
③テンプレートのおかげで狙った軌道にほぼ正確に刺入できる
④それらが従来のオープン法と比べて割と小侵襲でできる
だからです(あくまでも、私見ですけど)。

とくに、①、②は術式をオープン法からPPS法に変更したときに、低侵襲性を優先して、犠牲にしたものです。

デメリットとしては、
・やっぱりオープンであることは間違いない
・感染したら全滅の可能性
・テンプレート、CBT刺入のために、TLIFでは展開しなくてもよいはずの部分も展開が必要

といったところでしょうか。

経皮的にCBTをするということなので、おそらく①、②はできませんが、PPSよりもさらに侵襲を抑えることができる可能性を感じました。

本日のまとめ


この論文を読んで、3Dテンプレートが間に合わない場合には、透視下でCBTを打つことも考慮できると思いました。

フリーハンドのCBTに不慣れなわたしには、経皮的CBTは敷居が高く感じます。

まずは経皮的な操作にこだわらず、透視下にCBTスクリューが打てるようになったら安心ですね。

というのも、一度開封の瞬間にテンプレートを術野から落っことしたことがあるんです(笑)

わたしのこれまでの手術方針を見つめ直す機会になって、とてもおもしろい論文でした。