CBTを経皮的に打つ!!
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はじめに
CBT:Cortical bone trajectory
は、腰椎の後方スクリュー刺入の新しい軌道として、2009年にThe Spine Journalに掲載されました。
2009年なので、もう新しいと言えないのかな、、、
理想で言えば、このスクリュー軌道は
①椎弓背側の刺入点の皮質骨
②椎弓根内側下縁の皮質骨
③椎弓根外側上縁の皮質骨
④椎体外側の皮質骨
と4段階で皮質骨を噛み込みます。
そのため、従来の椎弓根スクリューと比較して、
・引き抜き強度が約30%増加
・挿入トルクが約1.7倍に増加
するとされています。
硬い皮質骨に最大限に接触するためには、下穴をつくるときに、勇気をもって硬いところに挑んでいかなければなりません。
それがとてもむずかしいし、怖いんですよね。
しかし、マイスパインMCというメダクタの3Dテンプレートを用いると、かなり正確に術前にイメージしたCBTの軌道を捉えることができます。
「あなたの背骨の写真から作成したテンプレートをもとに手術します」
— とぜんな脊椎外科医@四つ葉スパインクリニック (@yotsuba_spine) January 26, 2019
という新たな説明。
まさにマイスパイン=ユアスパイン。
しっかりと設計図・模型を作成できることにより、径6.0で長さは40-45mm程度のスクリューが刺入できるようになりました。https://t.co/EfzC7hhhT8
CBTをメインに行うようになった
ということで、いまわたしはこのテンプレートを愛用して、CBTでのPLIF/TLIFを行っています。
とても気に入っています。
今の所、この3Dテンプレートを作成するためには、
1.患者さんのCT画像をCDRに落としてメダクタの担当にわたし、
2.メダクタのWeb上のプラットフォームで作図し、
3.スイスにあるメダクタの工場でテンプレートが作られ、
4.日本に輸出される
という手順があるため、おおよそ2.5〜3週くらいの期間が必要なのです。
なので、3Dテンプレートが手術スケジュールに間に合うのであれば、わたしは基本的にCBTで椎体間固定をするようになっています。
間に合わなければ、これまで通り、PPSで手術を行っています。
その時は基本、バイパープライム®を用いています。
デピューシンセスのバイパープライム。
— とぜんな脊椎外科医@四つ葉スパインクリニック (@yotsuba_spine) February 22, 2019
ガイドとなるスタイレットとスクリューが一体化していて、手順の短縮が図れます。
2面透視との相性が抜群。
プライムの良さを最大限に引き出すには、2面透視がオススメです。https://t.co/SrjwUtbXN4
CBTを経皮的に打つ!
ところが、CBTは経皮的に打つこともできるそうです。
論文を紹介します。
One-Year Prospective Evaluation of the Technique of Percutaneous Cortical Bone Trajectory Spondylodesis in Comparison with Percutaneous Pedicle Screw Fixation: A Preliminary Report with Technical Note
Sumihisa Oritaら.
J Neurol Surg A Cent Eur Neurosurg. 2016;77(6):531-537.
わたしが勝手に敬愛している千葉大学グループからの論文です。
そうか、、、
透視を用いて、PAKニードルなどで下穴を掘れば、割と正確に打てるのか。
しかも経皮的に!
これまで、CBTスクリューを経皮的に挿入するテクニックは聞いたことがありませんでした(不勉強ですみません)。
この論文には、
・刺入点の決め方
・透視でのトラジェクトリーの見え方
・PAKニードルが滑らない工夫
・注射シリンジを用いたオリジナル外套の作りかた
などなど、かなり詳細なTipsが紹介されています。
さらに、経皮的CBTと、従来のPPSでの固定との治療成績を比較しています。
長期で見ていくと、腰痛も下肢痛も経皮的CBTのほうがPPS群より改善しています(統計学的には下肢痛の改善は有意)。
CBTに感じている私なりのメリットとデメリット
論文では、腰痛の改善がいい理由を、PPSが貫く筋層が多裂筋、最長筋であることに対して、経皮的CBTは多裂筋のみであることを考察していました。
実は、PPSって術後にオープン法よりも痛がる人がけっこういると感じていたんですよね。
わたしが術式をCBTに変更している理由は
①TLIF時に反対側関節を骨母床として骨移植できる
②トランスバースコネクターを使える
③テンプレートのおかげで狙った軌道にほぼ正確に刺入できる
④それらが従来のオープン法と比べて割と小侵襲でできる
だからです(あくまでも、私見ですけど)。
とくに、①、②は術式をオープン法からPPS法に変更したときに、低侵襲性を優先して、犠牲にしたものです。
デメリットとしては、
・やっぱりオープンであることは間違いない
・感染したら全滅の可能性
・テンプレート、CBT刺入のために、TLIFでは展開しなくてもよいはずの部分も展開が必要
といったところでしょうか。
経皮的にCBTをするということなので、おそらく①、②はできませんが、PPSよりもさらに侵襲を抑えることができる可能性を感じました。
本日のまとめ
この論文を読んで、3Dテンプレートが間に合わない場合には、透視下でCBTを打つことも考慮できると思いました。
フリーハンドのCBTに不慣れなわたしには、経皮的CBTは敷居が高く感じます。
まずは経皮的な操作にこだわらず、透視下にCBTスクリューが打てるようになったら安心ですね。
というのも、一度開封の瞬間にテンプレートを術野から落っことしたことがあるんです(笑)
わたしのこれまでの手術方針を見つめ直す機会になって、とてもおもしろい論文でした。
「MySpineMC」というメダクタのシステムを紹介します。
— とぜんな脊椎外科医@四つ葉スパインクリニック (@yotsuba_spine) January 27, 2019
3Dテンプレートを作成してもらい、ガイド下にCBTスクリューを打つ技術です。
残念ながら、ライセンス制で誰でも使用できるわけではありません。
キャダバーでの研修を必要とし、鋭意全国展開中です。https://t.co/QYmKYIp6hJ
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