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はじめに


わたしはMySpine MCの大ファンです。

MySpine®とは、スイスに本社を置くメダクタ(Medacta)という企業の商標です。

3Dプリンター技術を用いて、その患者さんにぴったり適合するテンプレートを作成。
それを実際の術野で用いてinstrumentation手術を行うのです。

2018年からCBT用の患者適合型テンプレートが作成され、MySpineMC(MC; Midline Cortical)という商標で使用可能となりました(ライセンスが必要です)。

腰椎のPSのテンプレートと比べて、展開の侵襲をかなり抑えることができるようになりました。
そしてテンプレートのおかげでとても正確にCBTスクリューが刺入できます。

この技術革新により、instrumentationは、もはやテンプレートを当てるだけの単純な作業に変わってしまいました。

テクノロジーの進化は素晴らしいです。

腰椎から胸椎へ


あまりに素晴らしいので、いま胸椎のinstrumentationにもMySpineMC®を使用し始めました。
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この軌道が胸椎の椎体で力学的にどうなのかはおいといて(汗)
胸椎のラミナは変性が乏しく、テンプレートのフィット感は腰椎よりも安定感が大きい印象です。

そしてラミネク前にすでにスクリューの下穴が掘られているので、椎弓根のメルクマールとして機能し、椎弓切除、椎間関節切除の掘削に迷いがありません。

そのため椎間孔部が容易にしかも十分に開放されるので、H7mm☓W9mmくらいのケージであれば、ルートをよけて椎間孔部から挿入できます。

ということで、MySpine®は胸椎にもすばらしい威力を発揮します。

むしろ、実際、MCはあとのラインナップ。
MySpine®はPSのテンプレートを作って、AISや成人脊柱変形に応用するものです。

その様子をイタリア・ミラノのGareazzi病院に手術見学に行きました。

AISの治療に一切、透視を使っておらず、ぶったまげた次第です。

Gareazzi病院でのMySpineを用いたAISの治療成績は非常に素晴らしく、その成果はすでに論文化されております。
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胸椎から頚椎へ


そうなると次は頚椎への期待が高まります。

わたしはMySpine®でテンプレートのすばらしい有用性を実感しました。

メダクタに聞けば、2020年には頚椎用が登場してくるようです。

実はすでに秋田脳血管研究所の菅原卓先生が頚椎のテンプレートを開発されているのですね。

2018年Spineの投稿で、これまたすばらしい成績が掲載されております。
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要約すると、頚椎・頚胸椎・胸椎で後方固定術を受けた患者103人813本のスクリューの軌道を術前計画と術後CTで比較しています。

全体として、98.5%、801本が椎弓根穿破なし。
血管障害、神経障害は1例もなし。

頚椎胸椎でこの数字は素晴らしいとしかいいようがありません。

Grede0が、椎弓根穿破なし
Grade1で<50%
Grade2で>50%
として、
・頸椎532本(98.9%)Gradeゼロ、Grade1はわずか6本(1.1%)
・胸椎269本(97.8%)Gradeゼロ、Grade1はわずか6本(2.2%)
です。

グレード1の高位はC4 – 7、T1 – 3、およびT8で、
高位や椎弓根のサイズ、軌道角度に相関はなかったそうです。

術前計画とのずれは、
・頸椎で平均0.6±0.40mm(0.0-1.7mm)
・胸椎で0.97±0.71(0.0-2.3mm)
でした。
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ちなみに、コストは、1椎体(2PS)あたり、スクリューガイドテンプレートが4ドルから8ドル、椎体モデルが8ドルから20ドルくらいだそうです。
10レベルの固定(20 PS)の場合、スクリューガイドテンプレートと椎体モデルの合計コストは120〜280ドルと報告されております。

う〜〜ん、、、素晴らしい。

どのような手続きで使用できるのか、わたしは知らないのですが、わたしのような場末の医師にも使用できるのであれば、ぜひトライしてみたいです。

ということで、メダクタからの頚椎テンプレートも待ち望んでいます!

本日のまとめ


テクノロジーの進歩は素晴らしいです。

Instrumentationの正確性は手術の成功に不可欠です。

困難な症例にもストレスなく正確にできるようになれば、患者さんにも医師にも、社会的経済的にもすべてにおいてよい方向にいきますね。

脊椎手術はまだまだ未完成で、今後の発展が楽しみな分野です。