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とぜん2020.001

はじめに


頚椎前方アプローチの手術でもっとも恐ろしい合併症は、

「気道閉塞」

です。

通常、頚髄症性脊髄症は骨棘や変性した椎間板により前方から圧迫されて生じます。

頚椎前方除圧固定術は、頚髄の圧迫を直接取り除くことができる上に、さらに頚椎のアライメントを矯正できるため、非常に理にかなった術式で、多くの脊椎外科医に好まれます。

しかし、気道閉塞をきたすと不幸にして死に至ることもあり、確率は低いものの、大変慎重にならざるを得ない恐怖があります。

それぞれの施設で対策を講じていると思います。

大阪労災病院から周術期のプロトコールが提起されており、大変参考になりますので、記事にいたします。
スクリーンショット 2020-01-04 6.48.12


初期症状について


術後一般病棟に帰室して3時間程度してから
・頻呼吸
・四肢震え
・パニック発作
と記載あります。

その約35分後に
・呼吸苦
・チアノーゼ

5分後、心肺停止、死戦期呼吸。


・・・一瞬の出来事で本当に恐ろしいです。

自分が喉に餅を詰まらせたら、一瞬で窒息死です。

まさにそんな状況が起こっているといえます。

術後のCTでは、手術高位のC5/6より上位での咽頭浮腫が著明であり、
気道浮腫による気道閉塞
と判断されました。

周術期プロトコール


大阪労災病院の周術期プロトコールを抜粋します。
とぜん2020.002


考察では危険因子として、以下が挙げられております。

【患者因子】
・高齢
・肥満
・喫煙歴
・全身合併症(呼吸器疾患、心疾患、代謝性疾患、睡眠時無呼吸症候群)
・外傷
など

【手術因子】
・高位がC3/4より上位
・多椎間手術
・手術時間5時間以上
・出血量300ml以上
・前方後方同時手術
など

①これらのリスクチェックを行い、術前からステロイド(プレドニン20mg)を使用するかどうか。
②全例ICU管理、術当日の抜管は行わない
③術翌日の抜管にむけて、4時間ごとのプレドニン20mg投与
④カフリークテストで抜管時にtube exchangerを用いるかどうか
⑤抜管前後で頚椎レントゲン側面像をチェック
⑥抜管当日もICU管理、頚椎レントゲン側面像をチェック
⑦抜管翌日に耳鼻科医による咽頭浮腫、声帯運動のチェック
⑧一般病棟へ

挿管されているときの頚椎レントゲン側面像は咽頭浮腫の評価はなかなか困難です。

抜管後に撮像、チェックすることはとても参考になります。

病棟管理マニュアル


病棟管理マニュアルも策定されております。
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Sat正常でもコールする症状として
・呼吸苦の持続または悪化
・パニックまたは興奮状態
・声質の変化、頻呼吸:とくに吸気時の喘鳴や異常音、鼻が詰まったようなこもり声

コールの際は、救急カート用意、ソルコーテフ250mgのivの準備

本日のまとめ


頚椎前方アプローチによる気道閉塞はとても怖いです。

やっぱり頸椎前方除圧固定術は怖い
でも記事にしましたが、浮腫は外表面上に現れないので、楽観視してはいけないと思います。

われわれは、患者さんのADLの向上を目指して手術しております。

かえって不幸な結果になったときに、それを論文で社会で共有し、再発しないように提起することはとてもエネルギーを要する行動だと思います。

とても尊敬いたします。

大変参考になりました。

ありがとうございました。

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