頚椎前方手術においての周術期管理プロトコールと病棟管理マニュアルの紹介
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はじめに
頚椎前方アプローチの手術でもっとも恐ろしい合併症は、
「気道閉塞」
です。
通常、頚髄症性脊髄症は骨棘や変性した椎間板により前方から圧迫されて生じます。
頚椎前方除圧固定術は、頚髄の圧迫を直接取り除くことができる上に、さらに頚椎のアライメントを矯正できるため、非常に理にかなった術式で、多くの脊椎外科医に好まれます。
しかし、気道閉塞をきたすと不幸にして死に至ることもあり、確率は低いものの、大変慎重にならざるを得ない恐怖があります。
それぞれの施設で対策を講じていると思います。
大阪労災病院から周術期のプロトコールが提起されており、大変参考になりますので、記事にいたします。
初期症状について
術後一般病棟に帰室して3時間程度してから
・頻呼吸
・四肢震え
・パニック発作
と記載あります。
その約35分後に
・呼吸苦
・チアノーゼ
5分後、心肺停止、死戦期呼吸。
・・・一瞬の出来事で本当に恐ろしいです。
自分が喉に餅を詰まらせたら、一瞬で窒息死です。
まさにそんな状況が起こっているといえます。
術後のCTでは、手術高位のC5/6より上位での咽頭浮腫が著明であり、
気道浮腫による気道閉塞
と判断されました。
周術期プロトコール
大阪労災病院の周術期プロトコールを抜粋します。
考察では危険因子として、以下が挙げられております。
【患者因子】
・高齢
・肥満
・喫煙歴
・全身合併症(呼吸器疾患、心疾患、代謝性疾患、睡眠時無呼吸症候群)
・外傷
など
【手術因子】
・高位がC3/4より上位
・多椎間手術
・手術時間5時間以上
・出血量300ml以上
・前方後方同時手術
など
①これらのリスクチェックを行い、術前からステロイド(プレドニン20mg)を使用するかどうか。
②全例ICU管理、術当日の抜管は行わない
③術翌日の抜管にむけて、4時間ごとのプレドニン20mg投与
④カフリークテストで抜管時にtube exchangerを用いるかどうか
⑤抜管前後で頚椎レントゲン側面像をチェック
⑥抜管当日もICU管理、頚椎レントゲン側面像をチェック
⑦抜管翌日に耳鼻科医による咽頭浮腫、声帯運動のチェック
⑧一般病棟へ
挿管されているときの頚椎レントゲン側面像は咽頭浮腫の評価はなかなか困難です。
抜管後に撮像、チェックすることはとても参考になります。
病棟管理マニュアル
病棟管理マニュアルも策定されております。
Sat正常でもコールする症状として
・呼吸苦の持続または悪化
・パニックまたは興奮状態
・声質の変化、頻呼吸:とくに吸気時の喘鳴や異常音、鼻が詰まったようなこもり声
コールの際は、救急カート用意、ソルコーテフ250mgのivの準備
本日のまとめ
頚椎前方アプローチによる気道閉塞はとても怖いです。
やっぱり頸椎前方除圧固定術は怖い
でも記事にしましたが、浮腫は外表面上に現れないので、楽観視してはいけないと思います。
われわれは、患者さんのADLの向上を目指して手術しております。
かえって不幸な結果になったときに、それを論文で社会で共有し、再発しないように提起することはとてもエネルギーを要する行動だと思います。
とても尊敬いたします。
大変参考になりました。
ありがとうございました。
あらゆる周術期合併症に対するトラブルシューティングが惜しみなく記載されております。
脊椎外科医必読の書です!
頚椎前方アプローチの気道浮腫はとても怖い合併症のひとつです。
— とぜんな脊椎外科医@四つ葉スパインクリニック (@yotsuba_spine) January 3, 2020
抜管後の咽頭部の浮腫の経時的変化をレントゲンで追いかけました。
こんなに腫れています!
外傷症例なのでなおさらだと思います。https://t.co/3Uj69jQmpi
頚椎前方アプローチ、ドレーン管理についての、病棟Ns講義用のスライド説明文。
— とぜんな脊椎外科医@四つ葉スパインクリニック (@yotsuba_spine) January 3, 2020
怖くなりましたか?
わたしは頚椎前方手術後は、とっても怖いです。https://t.co/HWVwUlasve
コメント
コメント一覧 (2)
このような場末のブログにコメントいただき、ありがとうございます。励みになります。ご質問いただきました、1、SBドレーンに関してですが、SBドーレンを使用したことがなく、オープンクランプ法というものがわかりませんので、Twitterでお尋ねしてみます汗。
2.に関しては、頻出の略語を次の記事にアップしておきます。
もしまたおたずねしたいことや掘り下げてほしいことなどございましたらご連絡くださいませ。
コメントありがとうございました。嬉しかったです。
いつもブログを見させて頂き、勉強させてもらっています。ありがとうございます。恥ずかしながら常識ない文面になっていると思います、すみません。
私は脊髄脊椎外科病棟の看護師です。なかなか教科書等にはのっていない事もあり、ブログは大変勉強になります。専門的な参考書は集めるのがなかなか大変で(金銭的に)諦めています。
頸椎前方除圧固定術を受ける患者さんの術後の管理は、やはりとても怖いですね。先生が周術期管理を載せていたため、毎回読んで忘れない様に心して焦らない様に(他患者の担当もあり、忙しいため)対応しています。
そして、突然なんですが、いくつか質問があります。
1、SBドレーンのオープンクランプ法はどのような理由で指示されますか?
CLPの術後の方に時々指示が出ます。術中硬膜損傷した訳でもなく、何事もなく手術終えられた方でした。排液の性状も血性〜淡血性で髄液様ではありません。一日のトータル量は150ml位でした。
2、これは、私個人が興味あるんですが、病名や術式名の略語の正式名称が知りたいです。CSM.CCS.LLP.PSF等。
調べるにも私の英語力では限界があって中断してしまいました。単語と和訳が一致してるのか、わからないままになってます…。
いつでも構いませんので、いつか教えて頂きたいと思います。よろしくお願いします。