BKP後の隣接椎体骨折を予測しよう
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はじめに
骨粗鬆症性椎体骨折に対するBKPは、場末の救急病院に勤務する私には福音の治療のひとつと思っています。
以前、
「BKPよ、お前なすでに死んでいる!?」
でも記載いたしましたが、
・VERTOS Ⅳ
・コクランレビュー
で、BKPは世の学術界隈から抹殺されました。
しかし、場末の救急病院では、すでに数個椎体骨折を罹患し、ぎりぎりの体力で生活しているところで転倒し、新規骨折をおこして、もう動けない、といった理由で救急搬送されてくる高齢者患者があとをたちません。
このような患者さんに積極的保存加療を行っていくと、疼痛改善が得られても、骨折以前の体力には当然もどれず、自宅生活を諦めざるを得ません。
BKPの意義は痛みを速やかに改善させること
BKPの意義は、すみやかに疼痛を改善させることができる、というものです。
なので、このようなギリギリの患者さんの痛みをすぐに和らげて、すぐにリハビリの軌道に乗せて、骨折以前以上の体力づくり、歩行練習を提供して、もとの自宅生活に戻すということは大変意義深いものと思います。
だらだら前置きが長くなってしまいましたが、今回の記事で紹介したいことは、
「BKP後の隣接椎体骨折を予測しよう」
というものです。
BKP後の隣接椎体骨折にまつわる謎
BKPが開始されてから、比較的早期に隣接する椎体が折れることは臨床医からは認識されております。
合併症のひとつとして理解されておりますが、どんなときに起こるのか、というのは実際のところ、まだそんなに明確にはわかっておりません。
そして、もうひとつ、では隣接椎体骨折が起こったから、悪なのか?BKPやらなかったほうがよかったのか?ということに関しても、謎です。
というのも、BKPを行ったときは、救急車で来院して激しく痛くて満足に寝返りもうてないくらいの痛みであったにも関わらず、BKP後の隣接椎体骨折は、
「治療後は調子まあまあよかったのに、最近また調子が悪くてね、、、」
など、リハビリで歩行しながらだったり外来で相談できるレベルの痛みであることが多いです。
そして隣接椎体骨折がわかったにも関わらず、
「まあこのくらいならもう一回BKP受けなくても、様子みながらでいいです」
などとADLが低下しないこと多いからです。
BKP後隣接椎体骨折の臨床的意義と予測因子について
このような日々の臨床の実感に対して、大阪市立大学の高橋真治先生、星野雅俊先生たちのグループが論文をだしてくださいました。
「Balloon kyphoplasty後隣接椎体骨折の臨床的意義とその予測」
10施設での研究データ109例をもとにBKP後の隣接椎体骨折の発症の頻度や臨床に及ぼす影響そして、予測因子を検討してくださっております。
そして、BKP後の隣接椎体骨折の予測因子として、以下を述べられております。
①胸腰椎移行部の骨折(スコア2点)
②椎体骨折の既往(スコア1点)
③術前の椎体楔状角25度以上(スコア1点)
④手術による10 度以上の矯正(2点)
合計6点とし、スコアの合計が5点以上あると隣接椎体骨折が高率に発生する、とのことです。

これは、とても実感できますね!!
肌感覚として、
・前に折れている人はまた折れやすい
・胸腰椎移行部で圧潰が強いひとをがんばって矯正するとがもとに戻ろうとして上の椎体の下壁がおれる
ということを経験します。
そして隣接椎体骨折が起こったことの臨床的な意義についてです。
「腰背部痛のVASは、術1か月時点で有意な差を認めるのみで、その後両群間の差は縮小し、 術後6か月時点では有意差を認めなかった」とのことです。
「多くが保存治療で改善し、QOLへの明らかな影響は認めなかったとして、たとえ隣接椎体骨折が生じてもBKPは骨粗鬆症性椎体骨折の有用な治療手段である」と結んであります。

この結果も普段感じていることでとても納得できました。
もちろん、矯正損失の原因となってしまいますが、BKP単独では限界があります。
本日のまとめ
BKPは高齢者のADL維持、改善のリハビリへの軌道として意義のある治療だと思っています。
ADLが比較的維持されている初回骨折や2回め骨折にはあまり必要ないかもしれませんが、場末の救急病院へ搬送されてくるような自力で動けなくなってしまった患者さんに効果抜群だと感じています。
このような気持ちをいかに論文化して世間に発信していくか、、、
これは、「二択で迷ったらアグレッシブな方を選べ」のブラックホイスさんに教えを乞うしかありません!!涙
ブラックホイスさん、Spine acceptおめでとうございます!!
またいろいろご指導くださいませ!
立ち上がれ、場末脊椎外科医!!
コメント
コメント一覧 (2)
骨粗鬆症椎体骨折は場末で臨床してますと避けては通れないのに、わからないことホント多いですよね...沢山診ている我々には、多分そのわからないところを解明する責任がありますので、できることドンドンやっていきましょう!
星野先生の文献参考になります!