腹臥位での神経トラブルを回避したい。安全性と低侵襲性がトレードオフの関係になることはよくない。
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はじめに
こちらの記事
についてコメントを頂きました。
以前T5 burst に対しT3.4にPPSを挿入しようとして透視が見えるように先生が今回されたようなバンザイに近い体位をしてオペをしたところ、不幸にも腕神経叢麻痺を一時的に生じてしまった症例がありました。
もちろん教科書的にも良くない体位だとは思いますが、透視確認には仕方がないと思いそのような体位で行ったのですが、先生は上位胸椎のPPSをされる際、体位で気をつけてられる事などありますでしょうか?もしありましたらご教授頂けると幸いです。
「脊椎外科初学者」さん、コメントいただき、ありがとうございます。
う〜〜ん、正直、苦しい、ご質問ですね、、、
実際問題として、T2にPPSを打ったこと自体が初めての経験でした。
今回の症例では、正直たまたまうまく見えただけで、そのときの体位で気をつけたことを備忘録として記事にあげました。
なので、何回も上位胸椎でのPPSの経験があって十分な答えを持ち合わしているわけではないんです。
申し訳ありません。
安全性と低侵襲性がトレードオフの関係になることはよくない
今回の症例はPPSではなく、オープンでPL fusionする予定で入りました。
わたしの感覚として、腹臥位の体位トラブル含めて、安全性とPPS手術の低侵襲性がトレードオフの関係になってしまうようならPPSの術式を選択すべきではありません。
見えないならば「openで見る」が鉄則です。
通常の体位をいくらかさらに工夫するくらいで、無理ない範囲でT2の側面が十分透視で視認できたので、これだったらPPSで十分可能と思い、PPSに移行しました。
決して、これからも上位胸椎でのPPSの記録をバンバン作っていきたい、というわけではありません。
なので、「上位胸椎でもがんばればPPSで問題なくいけます」といったような誤解を与えてしまったのであれば、大変申し訳ございませんでした。
ご質問いただいた記事の最後にも記載いたしましたが、透視で見えづらいのに、透視下手術の象徴であるPPSにこだわることは不要と思っています。
安全が担保されなければ、本末転倒で、低侵襲でなくなりますから、、、
独り善がりで神経トラブルを起こしてしまった苦い経験
以前、わたしが腹臥位で腕神経のトラブルを経験したときは、わたし独りよがりで体位を判断していました。
この過程が悪かったと感じたので、愛護的かどうかの判断を一緒に手術に入る直介・間介看護師や臨床工学士とコミュニケーションをとってから、手洗いに行くようになりました。
状況によっては麻酔科の先生にもひとこと申し添えることもあります。
体位トラブルが極力発生しないようにマニュアルやチェック項目を作るなどして、主治医とスタッフ間で確認しあうような体制づくりこそが大切だと思っています。
わたしはチームビルディングに課題があります。
体位に関しては、「バンザイに近い」とのことでしたので、これが愛護的な体位だったのか、これを全員でもう一度振り返ってみてはいかがでしょうか。
責任はもちろん主治医が負うことには変わりませんが、体位トラブルは、多くの目で心配を一緒に共有することで防ける可能性が上がると思っています。
体位で気をつけた事に関しては、記事の内容以上のものはありません。
申し訳ございません。
が、スタッフ間で共有することを常に心がけています。
資料としては、「脊椎脊髄ジャーナル 2017年11月号」が俊逸です。
本日のまとめ
体位トラブルは絶対に起こしたくない問題です。
脊髄モニタリングが始まり口唇や歯牙、舌の損傷もあります。
腹臥位だと神経のみならず眼球に対する保護も重要です。
怖いことばかりの中で頑張っていくしかありませんよね。
ご質問にたいしてお答えになれたかわかりませんが、わたしの課題はチームビルディングですね。
ともに脊椎外科を盛り上げていけたら幸甚です。
今後とも、こちらこそご指導賜りますよう、どうぞよろしくお願いいたします。
とぜんな脊椎外科医 拝
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皮膚トラブルは絶対起こしたくない合併症の一つです。
低反発弾性ウレタン素材のこマットで手術を終えて仰臥位に変換したときに、
驚いたことに、胸部や上前腸骨棘にまったく圧迫痕がついていませんでした。
いろいろな体位に関わる問題があります。
これらの対処は主治医ひとりでなんとかなるものではなく、上級医、麻酔科医、オペ室看護師、MEなど、現場にいる全員で問題を共有して、全員でフォローしていくことが大切だと思います。
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