見逃されることが多いのか?外傷にともなうC1-2回旋脱臼
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はじめに
以前記事にした成人での外傷性の環軸椎回旋脱臼症例についてです。
ふつうは、環軸椎回旋脱臼は通常は小児に多いです。
治療方針を文献で検索していたところ、
「見逃されることが多い」
という記載が多く、意外に感じました。
たしかに、珍しい病態ではありますが(わたしも経験するのは初めてです)、首が回旋して固定していますし、首を回そうとすると痛くて動かせないので、明らかにおかしいです。
いわゆる斜頸をおこしています。
“cock-robin” head positionとも表現されます。
見逃されるケースが多いとのことなので、まとめておきます。
脱臼とともに損傷する靭帯
翼状靭帯(alar ligament)は回旋と側屈を制動する重要な靭帯で、歯突起から後頭顆までをつないでいます。
C1-C2が屈曲回旋によって脱臼してしまっているので、翼状靭帯はねじ切れて、左右の関節包は損傷を起こしているはずです。
環椎横靭帯(transverse atlantal ligament)はC1左右の外側塊をつないで歯突起が後ろにずれてこないように押さえています。
回旋運動に寄与するのみで、Type 1損傷であれば、無傷のままです。
歯突起の前後方向での安定に寄与しているため、歯突起が前後方向での偏位が起こっている場合は、この環椎横靭帯も損傷されています。
靭帯のみならず歯突起骨折をともなっていることもあります。
このようなケースは内固定が必要になります。
これらを丁寧なシェーマでまとめてあるのがこちらの文献です。
Traumatic Atlantoaxial and Fracture-Related Dislocation
CT所見のまとめ
CTはC1-2の関節面と歯突起を注意深く観察しないといけません。
歯突起とC1前弓の位置や、関節面にずれや左右差が生じています。
せっかくなので、見逃されたというケースレポートの画像を添付します。
A missed traumatic atlanto-axial rotatory subluxation in an adult patient: case report
Figure 1は矢状面正中です。
たしかに骨傷はないんですが、歯突起と環椎前弓の幅が大きいのがポイントです。
通常は3mm以下です。
Figure 2は矢状面で右と左の椎間関節レベルです。
右のC1外側塊が前方にずれてC2関節上面からほとんどすべり出ています。
Figure 3、Aは水平断です。
ずれのない軸椎に対して、環椎が右前方にずれてしまっています。
それにともなって、歯突起と前弓の距離が開大しています。
Bは冠状断です。
C1/2椎間関節の裂隙が右が狭く左が開いています。
疼痛、斜頸、これらの画像所見で診断がつきます。
本日のまとめ
成人発症の外傷性の環軸椎関節回旋脱臼をまとめました。
わたしのケースでも救急→放射線科→脳神経外科→当科と4科を経由したのちに診断がつきました。
幸い椎骨動脈に問題が生じなかったため、遅い診断になったのかもしれません。
診断では、わたしもこれまで多くの失敗をしています。
患者さんの訴えは、わたしたちにおおくの気付きを与えてくださいます。
ひきつづき真摯に対応していきたいと思います。
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