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2021tozen.001

はじめに


C5麻痺は未解決の頚椎手術合併症の一つです。

何年も何年も討議されておりますが、正直、原因がまるでわかりません。

せめてもの救いは基本的には改善していく、ということでしょう。

とはいっても、改善傾向を認めるまでは、患者さんも術者も、気が気じゃないです。

今回、後弯変形を伴う頚椎症性脊髄症に対して、前後方一期的手術を行いました。

術後3日目くらいに左のC5麻痺が出現していることに気が付きました。(涙)

MMT3レベルまで低下し、約4-5週目で徐々に上がるようになってきました。

ホッとしました。。。でも・・・ツライ。

頚椎のあらゆる術式で発生するC5麻痺


C5麻痺は頚椎のどんな術式でも発生します。

前方固定でも後方椎弓形成でも、数%に発生します。

ただし、後方固定を追加すると、椎弓形成術と比較して10倍近く増加するとも言われます。

かといって、頚椎後弯が病態にあると前後方合併手術に踏み切らざるを得ないことがほとんどです。

考えられている原因としては
①tethering effect
②熱損傷
③過還流障害
などですが、どれも未だはっきりしないです。

矯正固定術後の C5麻痺の自然経過に関する報告は少ない


今回経験した症例のように、頚椎後弯の矯正固定術後に発生したC5麻痺に対する自然経過の報告はあまり多くありません。

中部ろうさい病院の井上太郎先生の論文にとても詳しいでした。

頚椎後弯症に対する前方固定手術,
後方固定手術、前後合併手術の比較― C5麻痺発生率の視点から
J. Spine Res. 6:1485-1488, 2015スクリーンショット 2021-02-23 9.21.19


頚椎後弯を有する頚髄症に対し、頚椎矯正固定術を施行した患者のC5麻痺の発生因子について
J. Spine Res. 7:856-859, 2016スクリーンショット 2021-02-23 9.21.01


頚椎後弯矯正固定術後に発生したC5麻痺の自然経過 ― 術後1年での筋力回復―
J. Spine Res. 7:1508-1512, 2016スクリーンショット 2021-02-23 8.41.27



・頚椎後弯矯正固定術を施行した症例
・かつ固定椎間にC4/5が含まれている
・58名(前方固定術25名、後方固定術22名、前後合併手術11名)
のうち術後C5麻痺を呈したのは13名でした。

この13名の内訳では、
・前方固定術では25名中4名(16.0%)
・後方固定術では22名中4名(18.2%)
・前後合併固定術で11名中5名(45.5%)

やはりC5麻痺の確率は前後合併固定術で高率に発生しているようです。

筋力はMMTでおおむね6か月で4.0、1年で4.6と徐々に改善していったそうです。

・術後6か月で64%(7/11)が MMT4以上まで改善し、45%(5/11)が完全回復した。
・術後1年で91%(10/11)が MMT4以上まで改善し、64%(7/11)が完全回復していた。

とまとめてあります。

・過度に矯正しないようにする(とはいえ、どこまでが至適かはわからない)
・C4/5椎間孔狭窄の評価(おなじく狭窄の有無をどう評価するのか難しい)
・MMTが3レベルならほぼ改善を見込める(1レベルまで低下してしまった症例の改善は難しそう)

本日のまとめ


今回経験した症例はMMTで3レベルであったので、改善を信じてリハビリに励んでいただきました。

改善したとはいえ、患者さんにはストレスをおかけしました。

C5麻痺を避けて頚椎手術を行うことは、現状では不可能です。

なんとか予防、克服できるようになりたいものです。。。