高齢者の手術を安全に行うための侵襲の目安
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はじめに
この10年で高齢者に手術する機会がふえています。
わたしも10年分しっかり年を取りましたが、手術を受ける患者さんも平均70歳代くらいだったのが、いまは80歳代くらいになっているという印象です。
合併症なく安全に手術したいのですが、高齢になった分、併存疾患や薬剤の数なども増えており、リスクが高いことは否めません。
高齢者への手術侵襲は少ないに越したことはありませんが、目安ってあるのでしょうか。
合併症を減らすための判断にしている論文がございます。
浜松医大発信のGo Yoshida先生らによる
「Predicting Perioperative Complications in Adult Spinal Deformity Surgery Using a Simple Sliding Scale」Spine. 2018;43:562–570
です。

リスク予測のスライディングスケール
この論文では、成人脊柱変形で手術を行った304人の患者さんを対象として、108人の患者で発生した合計195の周術期合併症を検討し、リスク予測のスライディングスケールを作成してくださいました。
周術期合併症の独立した危険因子のカットオフ値
・年齢:69歳
・手術時間:357分
・出血量:1990mL
・ASA Physical Status:3
・Charlson Comorbidity Index:2
という結果を考慮して、手術時間や出血量のひとつの目安を示してくださっています。

80歳を超えると、変形矯正手術は推奨されませんし、たとえ何かしら手術するとしても
・手術時間3時間以内
・出血量は500mLを超えない
を満たす侵襲の手術を考慮すべし、ということです。
ASD手術とはいかなくとも、手術侵襲の判断のひとつの目安として念頭に置いておこうと思っています。
CCIって?
ちなみに、このCCI: Charlson Comorbidity Indexってなんでしょう??

・1987年にCharlson らによって発表された慢性疾患に関連する19の状態についてスコア化し評価したもの
・スコア1
冠動脈疾患、うっ血性心不全、慢性肺疾患、胃潰瘍、末梢血管疾患、軽症肝疾患、脳血管疾患、膠原病、糖尿病、認知症
・スコア2
片麻痺、腎疾患、臓器障害を伴う糖尿病、5年以内に診断された悪性疾患、白血病、リンパ腫
・スコア3
中~重症の肝疾患
・スコア 6
転移性固形癌、acquired immunodeficiency syndrome(AIDS)
これらの合計を点数化したもの.
なるほど、、、知りませんでした。勉強になります。
心臓と糖尿と胃薬内服してたら、もう3点でカットオフ値超えているじゃないですか、、、
本日のまとめ
この論文は、自分のキャパ超えの手術をしてしまい、手術時間や出血時間が長くならないよう、自戒の意味ももちますよね。
自分の技術そして施設の能力が向上するまでは、このスケールの侵襲を超えないよう、いまの自分にできること粛々とがんばりレベル向上に努めます。
本文の考察に
「手術における手術時間や出血量、手順の選択は、手術の侵襲性に関わる大きな決定事項で、外科医の裁量によるものだから、このリスク予測スライディングスケールは、術者と施設のラーニングカーブに応じて、成人脊柱変形手術の方針決定に役立つものだ」
とあります。
とても感銘を受けました。
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