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はじめに




頚椎前方除圧固定術の気道トラブルは、1%前後に発生するとされます。

非常にまれではありますが、ひとたび気道狭窄がおこれば、呼吸ができなくなるというおそろしい事態を引き起こします。

緊急かつ適切な対応を行わないと低酸素血症に発展し、致命的になってしまいます。

わたしも空飛ぶ脊椎外科医先生のように、頚椎前方除圧固定術を行った当日は気が気でないため、病院に泊まることにしていました。

結果、再挿管を行う症例があり、わたしの能力だけでは対応できなかったので、周術期管理マニュアルを作成することになりました。

周術期管理マニュアル作成のきっかけ


わたしの施設でマニュアルを作ったきっかけは、息苦しさの訴えあり、緊急とはならなかったものの、再挿管を行った症例の反省からでした。

例にもれず、この日も病院に泊まっていたのですが、朝起きて回診したら、
「明け方くらいから息苦しい感じがしていて、今もするんです」
という訴えがあって、急いでポータブルレントゲンで確認すると、頚椎前方が腫れて気道が狭くなっていました。

麻酔科の先生と協議して再挿管していただくこととなり、麻酔科が対応してくださいました。

すでに朝の始業前だったので、それぞれの仕事がスタートします。

当たり前といえば当たり前なんですが、わたしでできることはほんの少しなんだな、と実感しました。

そこで、麻酔科部長とICU部長と話し合って、管理マニュアルを作成いたしました。

マニュアル作成には後述の論文を多いに参考にさせていただきました。

論文で発信していただいたおかげで、わたしたちの施設でもマニュアル化することができて、大変感謝しております。

論文って素晴らしい。

マニュアル作成の参考論文


マニュアル作成については、大阪労災病院からプロトコールが提案されており、大変参考になります。

一度記事に取り上げたことがあります。
2020年1月4日の記事ですね。


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また、2018年8月発行
脊椎脊髄ジャーナル 2018年 08月号 雑誌 /三輪書店
「頚椎前方手術 Up To Date」のなかの

「頸椎前方除圧固定における合併症と対策―安全な周術期管理のために 宮本 敬」

で宮本敬先生が手術から周術期管理にわたって網羅的かつ丁寧に解説してくださっております。



とても勉強になり、ゼッタイゼッタイに一読をおすすめします。


今では気道管理マニュアルに基づいて、ICU入室後翌朝に待機的抜管としています。

抜管はその日のICU専属医師のもとで行われます。

マニュアル運用後は幸いにして、再挿管を要した事象は発生しておりませんが、管理が標準化されていることで、麻酔科、ICU医、Ns、言語療法士などと、より密接にコミュニケーションを取り合うようになりました。

本日のまとめ


頚椎前方手術の気道関連合併症はとても怖いです。

管理のためのいろいろな工夫があるかと思います。

・気道閉塞予防のための手術手技
・早期発見のための管理体制


これらは脊椎手術を行う施設全体で共有して、この不幸な合併症が発生しないよう努めていきたいです。


・・・ところで、わたしは宮本敬先生の大ファンなんです。

JALASにはゼッタイ行きます。

2022年1月29日長良川国際会議場です!!

現地でみなさまにお会いできますように。

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