カテゴリ:
スポンサードリンク
2021tozen.001

はじめに


高齢者骨粗鬆症治療を行っていると、悩みのひとつの骨折に脆弱性骨盤輪骨折があります。

FFPs; fragility fractures of the pelvis
と表記されます。

医師側の認識不足のため、鑑別に上がらず、しかもレントゲン上でもわからないことが多いことから、診断の遅れ・治療介入の遅れが問題になることがあります。



Rommens分類提示


まず、Rommens分類を示します。

Rommens PM, Hofmann A.
Comprehensive classification of fragility fractures of the pelvic ring: Recommendations for surgical treatment.
Injury. 2013 Dec;44(12):1733-44.


スクリーンショット 2021-09-11 8.30.27


Type Ⅰ:前方骨盤輪のみの損傷
a:片側前方恥坐骨損傷のみ
b:両側前方のみ

Type Ⅱ:転位のない後方成分の損傷
a:転位のない後方成分のみの損傷
b:転位のない仙骨の圧挫 ・不全骨折+ Type Ⅰ
c:転位のない仙骨骨折 or 仙腸関節離開 or 腸骨骨折 + Type Ⅰ

Type Ⅲ:転位を有する片側後方成分の損傷
a:転位を有する片側腸骨骨折 + Type Ⅰ
b:転位を有する片側仙腸関節離開 + Type Ⅰ
c:転位を有する片側仙骨骨折 + Type Ⅰ

Type Ⅳ:転位を有する両側後方成分の損傷
a:転位を有する両側腸骨骨折 or 仙腸関節離開 + Type Ⅰ
b:転位を有する両側仙骨翼骨折+仙骨横骨折(H型骨折) + Type Ⅰ
c:転位を有する両側の異なる後方要素損傷(ⅣaとⅣbの複合) + Type Ⅰ


Rommensらはこの論文の中で、
FFPs Type Ⅱは主に急性損傷を表す患者で検出されたことに対して、Type ⅢやType Ⅳは、4〜6週間、症例によっては数か月もの長い痛みの病歴を有していた患者が多く見られた
と報告しています。

つまり、脆弱性骨盤輪骨折は、適切に治療介入されない場合、不安定性の程度が低い骨折から不安定性の程度が高い骨折に悪化していくという可能性があるわけです。

やはり、早期診断、早期治療介入の重要性は論をまたないですね。

Rommens分類に対する治療の考え方


治療方針に関しては、
「内固定術を施行した脆弱性骨盤輪骨折の2例」
安樂喜久ら;整形外科と災害外科.65:(2)211-214, 2016.
での方針がとても参考になります。

スクリーンショット 2021-09-11 10.03.22

スクリーンショット 2021-09-11 10.03.44


脆弱性骨盤輪骨折は概ね転位なく経過し,保存的に癒合が得られます。

一方で,診断の遅れによって、治療介入が遅れ、転位が増大し癒合不全に陥る症例も存在します。

早期に治療介入し、
・安定型の骨折が不安定型になっていかないか
・疼痛が順調に改善することにより、ADLも順調に改善していっているかどうか
などを適切に評価していくことが大切です。

本日のまとめ


脆弱性骨盤輪骨折、なかなか啓蒙が難しいですね。

先日も2か月間腰部脊柱管狭窄症の診断で他院で入院加療されていたFFPs症例に遭遇いたしました。

初期はもしかしたら安定型だったかもしれませんが、Type Ⅳbになっており、偏位のため排尿障害排便障害まで起こしていたため、手術加療を選択せざるを得ませんでした。

地域連携の会などの機会で、このような反省症例を共有していくような働きかけがいいのかもしれません。